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潰瘍性大腸炎を緩和する乳酸菌

増え続ける潰瘍性大腸炎

大腸の粘膜に潰瘍やただれが発生する潰瘍性大腸炎は、厚生労働省が指定する特定疾患(難病)です。近年の日本で患者数が毎年数千人単位で増加し、歯止めがかかっていません。
2014年の統計によると約17万人の方が発症しています。男女比を見ると女性1に対して男性2と、男性の患者数が多く、年齢では20代がピークであり働き盛りの世代に多い病気です。

主な症状は、下痢や腹痛、血便などで、症状が悪化すると発熱、体重の減少、貧血などが現われます。その中でも辛いのが排便に関する悩みで、1日に何十回もトイレに駆け込む方もいます。
いまだ根本的な治療法が見つかっていないためなかなか症状が改善せず、完治することが難しく、再発することが多いのが特徴です。

考えられる原因

潰瘍性大腸炎の原因はいまだにはっきりとは特定されていません。ですがこれまでの研究では主に以下のことが関係していると考えられています。

食事の欧米化

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潰瘍性大腸炎は1980年以前の日本では非常に少ない疾患でした。ところが1980年を過ぎたあたりから増加が始まり、90年代に入るとたがが外れたように毎年のように患者数が激増しているのです。

これは日本人の食生活の変化が関係していると考えられています。日本では昭和の中頃から洋食を食べる頻度が増え、いわゆる食事の欧米化が急速に進みました。
1970年頃から肉類や乳製品の摂取量が右肩上がりに増え、逆に食物繊維の摂取量が減少傾向にあります。食事の欧米化によって肉類の摂取量が飛躍的に伸び始めた時期と、潰瘍性大腸炎の患者数が増え始めた時期はほぼ一致しています。
つまり欧米型の食事を摂る機会が増えたことが潰瘍性大腸炎の発症と関係しているというのです。実際に肉類を多く摂っているアメリカでは毎年約100万人の方が潰瘍性大腸炎を発症しています。
ヨーロッパを見ると野菜や魚介類の摂取量が少ない傾向にあるイギリスや北ヨーロッパでは多く、魚介類や穀物を多く摂る南ヨーロッパでは比較的少ないことが分かっています。

腸内フローラの変化

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私たちの腸内には100兆個以上の細菌が生息し、それぞれ種類ごとにまとまり腸内フローラを形成しています。腸内細菌は体に有用な働きをする善玉菌、体に害を及ぼす悪玉菌、そのどちらにも属さない日和見菌に分かれています。

潰瘍性大腸炎の発症には腸内細菌が関与していると考えられています。無菌環境で飼育したマウスは潰瘍性大腸炎を発症しないことが分かっているからです。
さらに健康な人と潰瘍性大腸炎患者の腸内フローラを比較したところ、潰瘍性大腸炎患者の方は腸内に生息するビフィズス菌の数が健康な人の1/3から半分程であることが確認されています。
このことから乳酸菌やビフィズス菌を摂り腸内フローラのバランスが改善されることで、症状の緩和や再発の防止に繋がるのではと期待されています。

免疫異常

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私たちの体にはウイルスや細菌などの病原体から身を守る免疫システムが備わっています。免疫システムを動かしているのは免疫細胞ですが、その約7割は腸に集中し、これを「腸管免疫」と呼びます。
食事と呼吸の際に口と鼻から病原体に侵入される腸は、感染防御の最前線です。また腸は体に必要な栄養素は粘膜から吸収し、不要なものや有害なものは侵入を防いで便として排出する役目も担っています。
ところが腸内環境の悪化などで腸管免疫の働きに異常が発生すると、余分な脂肪分など体に必要のないものまで腸の粘膜から吸収してしまいます。
それによって粘膜に炎症が発生して、症状が進行すると潰瘍やただれとなり潰瘍性大腸炎を引き起こしてしまいます。

ビフィズス菌が有効

潰瘍性大腸炎に対する効果が期待されているのがビフィズス菌です。酸素がある環境で生育できない性質を持つビフィズス菌は、口から遠い大腸に生息しています。
ビフィズス菌は大腸で糖を分解して殺菌力の強い酢酸を大量に生成します。この酢酸によって悪玉菌の増殖を防ぎ、粘膜を保護して丈夫にする作用があることが分かっています。
ビフィズス菌を含むはっ酵乳を摂ることで症状が軽減されたという試験結果もあります。

【ビフィズス菌の効果を示す研究結果】

軽度と中等症の患者20名を対象に、まず二つのグループに分けて、一方にはビフィズス菌を含むはっ酵乳を1日100ml、12週間摂ってもらいました。なお被験者には通常の投薬治療を継続しながら参加してもらいました。
試験期間中は1ヶ月ごとに下痢の回数や腹痛や血便の程度などの症状を数値化しました。その結果、ビフィズス菌を含むはっ酵乳を摂った方は摂っていない方と比べて症状が有意に改善されることが確認されました。

大量の乳酸菌摂取で症状が緩和される

乳酸菌には腸管免疫を刺激する効果があり、潰瘍性大腸炎の症状緩和に効果があると考えられています。大量の乳酸菌を摂ることで潰瘍性大腸炎の症状が緩和し、症状が安定したという研究結果があります。
イタリアのギオンチェティという学者が行った研究では、2兆個の乳酸菌を含むサプリメントを毎日摂ることで、症状が改善されたと報告しています。
費用はかかりますが症例もたくさんあるため、潰瘍性大腸炎のような特定疾患を抱えた方は試す価値があると言えるでしょう。
2兆個の乳酸菌というと膨大な数に感じられるかもしれません。確かにヨーグルトに換算するとバケツ一杯分になります。ですがサプリメントなら1回分に1~2兆個の乳酸菌が配合されているため、気軽に摂ることができます。

潰瘍性大腸炎の緩和効果が認められた乳酸菌の種類

BB536株

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正式名称はビフィドバクテリウム・ロンガム・BB536株、1971年に世界で初めて食品利用されたビフィズス菌です。熱や酸素、酸に強く生きて大腸まで届き、殺菌力の強い酢酸を大量に生成するのが特徴です。
この酢酸には悪玉菌の増殖が抑制し、腸の粘膜を保護する作用が認められています。さらに人を対象にした試験で潰瘍性大腸炎にも一定の効果があることが分かっています。

【BB536株の試験結果】
軽症から中等症の潰瘍性大腸炎患者14名を対象に、治療薬と併用してBB536株を1日2000~3000億個24週間摂取してもらいました。
その結果、14名中12名で症状のスコアが低下して、そのうち10名は症状が大きく軽減されたことが確認されました。

ブレーベ・ヤクルト株

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ヤクルトが独自に開発したビフィズス菌です。生きて大腸に届いて酢酸を生成することで有害菌を減らしてくれます。さらに潰瘍性大腸炎の症状を改善する効果が認められています。

【ブレーベ・ヤクルト株の試験結果】
軽症から中等症の潰瘍性大腸炎患者21名を対象に、まず二つのグループに分けて、一方にはブレーベ・ヤクルト株100億個などを含むはっ酵乳を毎日100ml、1年間摂ってもらいました。
なお薬剤などの治療は続けながら参加してもらいました。毎月1回の診察時には、排便回数の増加、腹痛の発生、出血などの増加について聞き取りを行い、症状の悪化や再発の有無を判断しました。
その結果、ブレーベ・ヤクルト株などを含むはっ酵乳を摂っていない方は10名中9名が再発し、9名中3名の方は症状が悪化しました。
一方、ブレーベ・ヤクルト株などを含むはっ酵乳を摂った方は、再発が認められたのは11名中3名に留まることが確認されました。

LGG菌

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正式名称はラクトバチルス・ラムノーサス・LGG株、1985年に発見されて以来、世界30か国以上で利用されています。胃酸や胆汁酸に耐性があり、生きて腸まで届くプロバイオティクスの乳酸菌です。
さらに腸管への付着性が強いのも特徴です。このことから潰瘍性大腸炎やクローン病などの炎症性腸疾患に有効であると考えられています。

【LGG菌の試験結果】
大腸炎を発症させたマウスにLGG菌を含む発酵乳を投与しました。その結果、大腸炎の発症が抑制され、粘膜を含む腸管上皮組織のダメージが軽減されることが確認されました。

LP432株

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モンゴルの伝統的な乳製品に含まれる約2000株の乳酸菌の中から選び出されました。胃酸や胆汁酸に耐性があり、生きて腸まで届き、腸壁にくっつく性質を持つのが特徴です。
これまでの研究ではマウスを使った試験で、潰瘍性大腸炎を予防する効果があることが分かっています。

EF-2001株

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正式名称はエンテロコッカス・フェカリス・EF-2001株、さまざまな種類の乳酸菌の中でも免疫力を高める力が最も強い菌であることが報告されています。
これまでの研究ではマウスを使った試験で潰瘍性大腸炎の症状を緩和する効果が確認されています。

【EF-2001株の試験結果】
潰瘍性大腸炎を発症させたマウスに殺菌したEF-2001株を投与しました。その結果、投与していないマウスと比べて、下痢の抑制と大腸の萎縮が改善され、大腸粘膜組織のただれと出血が治まることが確認されました。

乳酸菌を活用した食事療法

脂肪の多い肉類や油ものは控える

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潰瘍性大腸炎の治療には食事内容の見直しが不可欠です。大腸に負担がかかり悪玉菌の増殖に繋がる脂肪の多い赤身肉、揚げ物などの油ものの摂取は控えてください。
とはいえ厳しい食事制限が強いストレスになると腸内環境にも悪影響を与えてしまいます。あまりこだわりすぎるのも考え物です。体調を見ながら適度に摂取しましょう。

ヨーグルトやサプリメントを摂ろう

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症状を緩和するために積極的に摂りたいのが乳酸菌やビフィズス菌を含むヨーグルトです。消化が良く大腸に負担をかけないため毎日摂ることができます。1日200g以上を目安に摂りましょう。
乳酸菌サプリであれば大量の菌を摂っても腸に負担をかけません。サプリメントを活用することで腸内フローラが改善されて、潰瘍性大腸炎の緩和にも繋がります。

食物繊維の摂取には注意

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食物繊維の摂取には注意が必要です。食物繊維は小腸で全く分解されないため、腸内で乳酸菌やビフィズス菌などのエサになります。
健康の方であれば多めに摂りたい栄養素です。ところが潰瘍性大腸炎の方が食物繊維を多く摂ると腸の消化機能に負担をかけてしまいます。乳酸菌を含むぬか漬けや漬物類も食物繊維が多く含まれているため控えたほうが良いでしょう。

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