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カスピ海ヨーグルトに含まれる乳酸菌

カスピ海ヨーグルトとは

ヨーグルトにはさまざまな種類がありますが、その中でもカスピ海ヨーグルトは独特の粘り気と食感が人気となり、2000年代前半には「カスピ海ヨーグルトブーム」が起こりました。
そのルーツはと言うと、黒海とカスピ海に挟まれた東ヨーロッパのコーカサス地方で伝統的に食べられてきたヨーグルトです。この地域には100歳を超えるお年寄りが多いことから世界有数の長寿地域として知られています。
日本でカスピ海ヨーグルトが広まったのは、医学博士の家森幸男氏(現京都大学名誉教授)が、コーカサス地方からヨーグルトの種菌を持ち帰り知人に分けたことがきっかけです。
優れた健康効果を持つほか、一般的なヨーグルトと比べて酸味がマイルドでクリーミーで口当たりが良いことも人気となった理由です。2017年現在、カスピ海ヨーグルト商品が製造販売され、スーパーなどの一般小売店で気軽に買えるまでに普及しています。

カスピ海ヨーグルトの特徴

カスピ海ヨーグルトは乳酸球菌のクレモリス菌と酢酸菌のアセトバクター菌という2つの菌によって成り立っています。クレモリス菌にはFC株、GCL1176株、CHCC2907株があり、いずれか一つが種菌に使われています。
アセトバクター菌はヨーグルトの品質には特に影響しませんが、家庭で繰り返し手作りする場合は安定化に貢献していると考えられています。
一度食べるとすぐに分かりますが、他のヨーグルトとは異なるカスピ海ヨーグルト最大の特徴は独特のトロみと粘り気です。このトロみと粘り気はクレモリス菌が生み出したものです。
カスピ海ヨーグルトは発酵段階において牛乳に含まれる乳糖が多糖へと変わり、それが網目状となってヨーグルトのタンパク質と絡まります。この構造が独特の粘り気と風味をもたらしています。
20~30℃という常温に近い低めの温度でも発酵するため、特別な道具を使わなくても牛乳から手作りしやすいのも特徴で、日本で急速に普及した理由の一つとなっています。

カスピ海ヨーグルトの歴史

故郷はコーカサス地方のジョージア

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カスピ海ヨーグルトの故郷はコーカサス地方のジョージアです。黒海とカスピ海に囲まれたこの地域はロシア内陸地方と比べて気候が温暖で四季もあることから、古くから牧畜が盛んに行われてきました。
そんなジョージアには「センチナリアン」と呼ばれる100歳を超えたお年寄りが多く暮らしていて、世界有数の長寿地域として知られています。その長寿の源となっているのが、この地域で昔から食べられてきたヨーグルトを始めとする豊かな乳製品です。
ジョージアでは「マツォーニ」と呼ばれるヨーグルトが日常的に食べられています。搾りたての生乳を自然に発酵させたものに種菌となる乳酸菌を加え、発酵が進むと独特の強い粘り気が発生します。

家森幸男氏が日本に広める

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1986年、この地域の長寿と伝統的なヨーグルトとの関係性に注目した家森幸男氏は、WHO(世界保健機構)の疫学調査のためにジョージア中北部に位置する南オセチア州の村を訪れた際に、ヨーグルトとその種菌を研究用に日本に持ち帰りました。

家森氏が持ち帰ったヨーグルトは京都のルイ・パストゥール医学研究センターで解析され、クレモリス菌のほかいくつかの菌が共生していることが発見されます。
家森氏はこのヨーグルトを「こんなにまろやかでおいしいヨーグルトは他にはない」と評し、親しい知人にのみ菌を分け与えましたが手作りしやすいことから人づてに広まっていきました。その高い健康効果が注目されるようになったこともあり、やがて「カスピ海ヨーグルトブーム」が起こります。

種菌の頒布活動を行う

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しかし、気温の高い夏場は雑菌が繁殖しやすいことから「手作りするカスピ海ヨーグルトは衛生面が心配」と指摘する声もありました。そこで、家森氏の「日本の人たちにも安全で健康に良いカスピ海ヨーグルトを食べてもらいたい」という想いから、大手食品メーカーのフジッコと協力して、NPO法人「食の安全と健康ネットワーク」によって冷凍乾燥した種菌の頒布活動を行いました。

「カスピ海ヨーグルト研究会」が発足

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2012年にはコーカサス地方の伝統食と健康に関する情報発信を目的に「カスピ海ヨーグルト研究会」が発足します。これまで行われた数々の研究によって多くの健康効果が発見されていて、コーカサス地方の長寿の秘密も明らかになっています。

また同年、家森氏らはカスピ海ヨーグルトのルーツを訪ねようと調査隊を結成して再びジョージアを訪れました。そこで家森氏はクタイシという町でカスピ海ヨーグルトに似たとろみと粘り気のあるヨーグルトが手作りされているのを発見します。この手作りヨーグルトは先祖代々に渡って継承されていて、日本に広がったカスピ海ヨーグルトにそっくりだったそうです。

クレモリス菌FC株

クレモリス菌FC株の特徴

正式名称はラクトコッカス・ラクティス・サブスピーシーズ(亜種)・クレモリス・FC株、家森氏が持ち帰ったカスピ海ヨーグルトの中から優良株として分離されました。
形は楕円形の菌が繋がった連鎖球菌の一種で、酸に強い性質を持ち、乳製品に含まれる乳酸球菌の中では数少ない、生きて大腸まで届くプロバイオティクスの乳酸菌です。
クレモリス菌FC株は発酵によってEPSと呼ばれる多糖の粘り成分を産生します。消化酵素によって分解されないため、機能が失われることなく大腸まで届きます。

クレモリス菌FC株の効果

優れた整腸作用

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生きて腸まで届くクレモリス菌FC株には優れた整腸作用が認められています。大腸に住むビフィズス菌は年齢とともに減少していき、食生活の変化や運動量の低下によって高齢者ほど便秘になりやすいとされています。
そこで健康な高齢者70名を対象に、クレモリス菌FC株を含むカスピ海ヨーグルトを1日に150g1ヶ月間摂ってもらい、ビフィズス菌の変化と排便状況について調べました。
その結果、カスピ海ヨーグルトを摂ることで、排便量、排便回数、排便日数ともに増加し、スッキリ感なども改善されることが確認されました。さらに便に含まれるビフィズス菌の割合も増え、悪玉菌が作り出すアンモニアの量が減少していることも分かりました。

便秘は男性よりも女性に多い傾向があります。そこで女子大生75名を対象に、クレモリス菌FC株を含むカスピ海ヨーグルトまたはヨーグルト風の牛乳デザートを1日200g2ヶ月間摂ってもらいました。
その結果、カスピ海ヨーグルトを摂ることで、排便量、排便回数、排便日数が改善されることが確認されました。

アレルギー症状を抑制

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アレルギー症状は免疫反応の異常によって、IgE抗体が過剰に分泌されることで引き起こされますが、クレモリス菌FC株にはIgE抗体の量を減らす作用が認められています。
健康な高齢者70名を対象に行った試験では、クレモリス菌FC株を含むカスピ海ヨーグルト、もしくは含まない食事を1日150g1ヶ月間摂ってもらいました。その結果、カスピ海ヨーグルトを摂ることで、摂取前よりも血液中のIgEレベルが低下することが分かりました。

アトピー性皮膚炎の症状を緩和

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クレモリス菌FC株を含むカスピ海ヨーグルトには、薬剤を塗ることで発生する皮膚の炎症や肥厚化が抑えられることが分かっています。
アトピー性皮膚炎の症状を発生させたモデルマウスに、クレモリス菌FC株を含むカスピ海ヨーグルトを与えたところ、アトピー性皮膚炎の症状が緩和することが確認されました。

インフルエンザワクチンの効果を高める

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免疫力が低下しているとワクチン接種を2回行っても、十分な効果が期待できないとされています。そこで重症心身障害児施設に入所している60名を対象に、クレモリス菌FC株を含むカスピ海ヨーグルトまたは含まないヨーグルトを1日100g10週間摂ってもらいました。
その結果、1回目のワクチン接種ではどちらのヨーグルトを摂った人も、ウイルスに対する抵抗力の指標となる抗体値が上昇しましたが、2回目の接種ではクレモリス菌FC株を含むヨーグルトを摂った方のみが抗体値が上昇することが確認されました。

免疫力を高める

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クレモリス菌FC株は多糖の粘り成分EPSを作り出すのが特徴ですが、この粘り成分には免疫細胞を活性化することで、免疫の調整や疾患の発症を抑制する作用があるサイトカインの生成を促す働きがあることが分かっています。

食後の血糖値の上昇を抑える

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私たちの体は糖質をエネルギーとして血液に溶け込ませて全身に届けています。そのため食事をすると血糖値が上がりやすく、食事から時間が経った栄養を吸収していない時間は下がります。
しかし、血糖値が急激に上がるような糖分の多い食事を続けていると、血液に含まれる糖の量が多い高血糖となり、脂質として蓄積されて肥満やメタボリックシンドロームに繋がります。また高血糖は糖尿病の原因でもあります。
そこでクレモリス菌FC株に血糖値の上昇を抑える作用があるかどうか調べました。マウスにブドウ糖と、牛乳またはクレモリス菌FC株を含むカスピ海ヨーグルトを一緒に与えました。
その結果、ブドウ糖に加えて牛乳を摂ったマウスは血糖値の上昇が僅かに抑えられ、カスピ海ヨーグルトを一緒に摂ったマウスは、血糖値の上昇がさらに緩やかになることが確認されました。
牛乳にも血糖値を下げる働きがありますが、クレモリス菌FC株を摂ったほうがさらに高い効果が期待できることを示しています。

中性脂肪を減らし、善玉コレステロールを増やす

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血中のコレステロールや中性脂肪が多い状態を高脂血症といい動脈硬化の原因となります。クレモリス菌FC株には、余分なコレステロールを肝臓に回収させることで善玉コレステロールを増加させて、中性脂肪を下げる作用があることがラットを使った試験で確認されています。

大腸炎の症状を緩和

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近年、炎症性腸疾患(IBD)と呼ばれる腸の粘膜に炎症や潰瘍が発生する病気が増加しています。クレモリス菌FC株には炎症によって引き起こされる細胞の損傷を抑制し、腸炎の症状を緩和する効果がマウスを使った試験で認められています。

ストレスによる皮膚のバリア機能低下を改善

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多忙な生活を送っている現代人は常に強いストレスに晒されています。ストレスによってホルモンバランスが乱れると、肌のバリア機能が低下して、乾燥や皮脂の過剰分泌を引き起こすことが分かっています。
そこで過密ストレスを与えたマウスに、クレモリス菌FC株を含むカスピ海ヨーグルトを与えて、肌機能が改善するかどうかを調べました。
その結果、クレモリス菌FC株を含むカスピ海ヨーグルトを摂ったマウスは、ストレスによって引き起こされる肌機能の低下が改善されることが確認されました。一方、他の乳酸菌で発酵させた粘り成分を含まないヨーグルトを摂らせたマウスでは効果が認められませんでした。

クレモリス菌GCL1176株

クレモリス菌GCL1176株の特徴

正式名称はラクトコッカス・ラクティス・サブスピーシーズ・クレモリス・GCL1176株、グリコが保有する乳酸菌です。FC株と同じく独特の粘り成分を産生するのが特徴で、これによってカスピ海ヨーグルト独特のとろみと風味をもたらしています。

クレモリス菌GCL1176株の効果

優れた整腸作用

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クレモリス菌GCL1176株には、高い整腸作用があることが認められています。25~38歳の成人に、クレモリス菌GCL1176株を含むカスピ海ヨーグルトを1日100g4週間摂ってもらい、排便状況を調べました。
その結果、排便回数、排便量が増加して、便性が改善されることが確認され、便秘を予防する効果が期待できることが分かりました。

コレステロールを下げる作用

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クレモリス菌GCL1176株には血中のコレステロールを下げる作用が認められています。コレステロール値が上がる原因には内因性と外因性があり、内因性は体内の代謝バランスが崩れることで発生し、外因性は脂質の摂りすぎによって発生します。
クレモリス菌GCL1176株は内因性と外因性、どちらのコレステロール値上昇にも効果があることが分かっています。
マウスに高コレステロール飼料を与えると血清コレステロール濃度が大きく上昇しますが、このときに飼料に5%のクレモリス菌GCL1176株粉末を加えると、血清コレステロール濃度の上昇が緩やかになることが確認されています。
また癌によって体内の代謝バランスが崩れているマウスに、クレモリス菌GCL1176株粉末を加えた飼料を2週間摂らせたところ、摂らなかったマウスよりも血清コレステロール値が低いことが確認されました。

アレルギー症状の緩和

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クレモリス菌GCL1176株が作り出す多糖には、アレルギー症状を緩和する効果があることが分かっています。
アレルギーを発症させたマウスにクレモリス菌GCL1176株が作った多糖を与えたところ、与えなかったマウスよりも血液中のIgE抗体の濃度が抑えられることが確認されました。
アレルギー症状はIgE抗体の過剰分泌によって引き起こされるため、IgE抗体の分泌を抑制することでアレルギー症状を緩和する効果が期待できます。

クレモリス菌CHCC2907株

クレモリス菌CHCC2907株の特徴

グリコが保有する乳酸菌で、2017年現在において同社が製造販売するカスピ海ヨーグルト商品は、この菌とサーモフィラス菌を組み合わせて発酵させています。
他のクレモリス菌と同じくEPSと呼ばれる粘り気のある多糖を産生するのが特徴で、これによってカスピ海ヨーグルトに独特のとろみと風味をもたらせています。

クレモリス菌CHCC2907株の効果

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新しい乳酸菌であるためか、2017年現在において保有するグリコの公式サイトには具体的な研究成果が公表されていないため、どのような健康効果があるのかは不明です。
しかし、EPSを産生する特徴は他のクレモリス菌と共通していることから、免疫力を高める、血糖値の上昇を抑える、肌機能の低下を防ぐなどの効果が期待できるのではないかと推定できます。

カスピ海ヨーグルトは手作りできる

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多くの乳酸菌は35~40℃で最も活発になるため、ヨーグルトを作るときはこの温度に保って発酵を促す必要があります。そのため温度管理が大変な家庭ではヨーグルトを手作りするのは難しいと言われてきました。
しかし、カスピ海ヨーグルト作りに使われるクレモリス菌は20~30℃という比較的低い温度で発酵するため、夏場であれば常温でも発酵させることが可能です。
そのため、家庭でも気軽に手作りヨーグルトを楽しむことができます。ヨーグルトに含まれる菌を使って作ることもできますが、市販されているカスピ海ヨーグルトの粉末種菌を使ったほうが品質が安定しやすく、失敗なく作ることができます。
必要な道具は熱湯で消毒した蓋がついた容器とスプーンだけで特別な道具は要りません。簡単なので興味のある方はぜひ試してみてください。

【材料】牛乳 500ml 粉末種菌 3g(1包)

1)容器に牛乳250mlと粉末種菌3gを入れて、スプーンでよく混ぜます。
2)残り半分の牛乳を加えてよく混ぜて、蓋をして常温(20~30℃)で発酵させます。
3)発酵時間は季節によって変わり24~72時間程度です。牛乳が固まれば完成です。

出来上がったヨーグルトに牛乳を1:10の割合で加えて混ぜて、同様に常温で発酵させれば作り足すこともできます。とはいえ何度も作り足していると菌が弱ってしまいます。1~2か月で新しい乳酸菌粉末から作り直しましょう。

ただし、いくら簡単に作れるとはいえ衛生面での注意は必要です。雑菌が混入しないように容器とスプーンはしっかりと熱湯消毒してください。
もしヨーグルトの中にダマができている、茶色く変色している、異臭がする、酸味が強すぎると感じる場合は、雑菌が繁殖している可能性がありますから捨ててしまいましょう。
長時間置いたカスピ海ヨーグルトには表面にクリーム色の膜ができることがありますが、これは乳酸菌の活動によるものなので体に害はありません。

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