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乳酸菌が腸の働きを助けるメカニズムとは

腸の働きを助ける乳酸菌

私たちの腸内には500種類以上、100兆~1000兆個もの細菌が生息し、種類ごとにまとまり腸内フローラを形成しています。
腸内細菌は乳酸菌やビフィズス菌などの体に有用な善玉菌、大腸菌(有毒株)やウェルシュ菌といった健康に悪影響を及ぼす悪玉菌、そのどちらにも属さない日和見菌に分かれています。
健康な人の腸内ではこのうち約2割が善玉菌で、悪玉菌は1割程度に抑えられています。日和見菌は善玉菌と悪玉菌のどちらか優勢なほうに味方をする性質があります。
乳酸菌やビフィズス菌といった善玉菌が腸内で優勢であれば、日和見菌が善玉菌に味方をするため、残りの1割の悪玉菌を抑制することができ、腸の健康を保つことができます。
私たちの腸内にもともと生息している乳酸菌やビフィズス菌は、腸内フローラのバランスを保つことで、悪玉菌の増殖を抑える重要な役割を担っているのです。
腸内で善玉菌が活発であれば腸の消化、吸収、排泄、免疫といった機能がしっかり働いて、体の機能を維持することができます。もちろん便秘や下痢、お腹の張り、腹痛といったお腹の不調も予防されます。

食品などから摂った乳酸菌には腸内の善玉菌を増やす働きがある

加齢や食生活によって減少する善玉菌

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私たちの腸内は胎児の時点では無菌状態です。出産のときに産道を通ることで口などから母親が持つ細菌が入り込み、独自の腸内フローラが形成されていきます。
生まれた直後の乳児の腸内には悪玉菌が多く生息しています。授乳が始まると、母乳にビフィズス菌を増やす因子と、善玉菌のエサとなるオリゴ糖が含まれていることもあり、ビフィズス菌が一気に増殖していきます。
授乳開始から1週間ほどで全体の95%がビフィズス菌を占めるようになります。離乳が始まるとビフィズス菌の数は減少して、代わってバクテロイデスなどの日和見菌が増え始めます。
その後、青年期までは善玉菌が2割前後に落ち着き、大腸菌やウェルシュ菌などの悪玉菌は比較的少なく安定した腸内フローラが保たれます。
ところが青年期を過ぎて老年期に入ると腸内フローラのバランスが乱れて、悪玉菌が増殖していきます。これは加齢の影響で大腸に生息するビフィズス菌が数を減らし、悪玉菌が活動しやすい腸内環境に変わったためです。
また、肉食に偏った食生活を送っていると悪玉菌が増殖して善玉菌の働きが弱くなります。他にも、強いストレスを日常的に感じている人は腸内の善玉菌の数が少ないという研究結果も報告されています。

乳酸菌を摂って腸内の善玉菌を増やす

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加齢などによる腸内の善玉菌の減少を抑えるためには、食生活を工夫して乳酸菌やビフィズス菌を積極的に摂る必要があります。
乳酸菌やビフィズス菌を生きた状態で腸に届けることができれば、乳酸や酢酸といった有機酸が大量に生成されて腸内環境を弱酸性に変えることができます。
それによって腸内にもともと生息していた善玉菌が活性化されて増殖を促すことができます。悪玉菌はアルカリ性の環境を好むため、腸内環境が弱酸性に変わることで悪玉菌の抑制にも繋がります。

とはいえヨーグルトなどに含まれている動物性乳酸菌は酸に弱い性質を持つため、せっかく生きた菌を摂ってもその大半は胃酸や胆汁酸で死滅してしまいます。
ですが近年の研究では、死滅した菌も一定の整腸作用をもたらすことが分かっています。死滅した乳酸菌やビフィズス菌は、死骸が善玉菌のエサとなることで増殖を促してくれます。
つまり菌の生き死にに関わらず菌体成分と菌の代謝物が腸に届きさえすれば良いのです。

腸を刺激してぜん動運動を促すビフィズス菌

実は腸内に生息する善玉菌の95%はビフィズス菌です。酸素がある環境を嫌う偏性嫌気性菌であるビフィズス菌は、口から遠く酸素の薄い大腸に生息しています。
このビフィズス菌が持つ働きの一つが、ぜん動運動の活性化です。ぜん動運動とは、腸の平滑筋が動くことで腸内の食べ物を動かして、排泄へと導く働きのことですが、私たちが毎日の生活で自然に便意を感じることができるのは、ぜん動運動があるからです。
ぜん動運動がしっかり働くと適度なお通じを保つことができるため、便秘を予防することができます。逆にぜん動運動が弱いと大腸で便が形成されても、なかなか肛門まで運ぶことができないため、スムーズな排泄ができず便秘になってしまいます。
ビフィズス菌は大腸で酢酸を生成することで、腸を刺激してぜん動運動を促す働きがあります。つまり腸内でビフィズス菌の働きが活発であれば便秘を予防することができるというわけです。
またこのぜん動運動によって、悪玉菌が食べ物を腐敗させて作り出したアンモニアや硫化水素といった毒素も少しずつ排出されます。ぜん動運動を促すことは腸内環境の改善にも繋がります。

食べ物の消化吸収を促す乳酸菌

私たちが食事で摂った食べ物は、まず胃で大まかに消化されて小腸に送られます。小腸では、粘膜から分泌される腸液に含まれる消化酵素によって、たんぱく質や脂肪などが分解されて体内に吸収されます。
残った食べカスと水分の一部は大腸に送られて便が形成されます。しかし、食べ物から摂った栄養分を全て小腸で分解して吸収することはできません。
小腸で処理しきれなかった成分は大腸に送られて、ビフィズス菌など腸内細菌のエサとして利用されます。そしてさまざまな成分を代謝して腸の健康を維持します。
大腸に生息する腸内細菌が作り出す代謝物の一つが酵素です。炭水化物や食物繊維といった小腸で分解されにくい栄養素を、ある程度分解する働きがあります。

乳酸菌の成分が免疫細胞を刺激する

腸で働く免疫システム

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私たちの体内には、ウイルスや細菌などの病原体から身を守る免疫システムが備わっています。その中でも食事と呼吸によって耐えず外気が入り込む腸は、常に病原体と接触する免疫の最前線です。
この免疫システムを腸管免疫と呼びます。免疫システムを動かしているのは免疫細胞で、そのうち小腸には体全体の約6割の免疫細胞が集中しています。

小腸が持つ免疫の中枢はパイエル板と呼ばれるリンパ球の集まりです。このパイエル板は食べ物など無害な物質は免疫反応を示さず通過させて、病原体など体に害を及ぼす異物に対しては免疫を働かせることで侵入を防いで排除します。
侵入されたとしても異物の情報を他の免疫細胞に伝えることで無力化します。体内を常にパトロールしているマクロファージは、ウイルスや細菌を発見して捕食し、食べきれなかった病原体の情報を伝達する働きをしています。
ヘルパーT細胞では病原体の情報を受け取って抗体を作るように指令を出す役目を担っています。B細胞は実際に抗体を作る工場です。
このようにさまざまな免疫細胞の連携プレーによって、ウイルスや細菌などに容易に感染することなく、異物を排除することができる仕組みです。

乳酸菌は腸の免疫細胞を刺激する

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乳酸菌は体に害を及ぼしませんが、ウイルスや細菌と同じ菌の一つであるため、免疫システムが働きます。具体的には、小腸に到達した乳酸菌の一部はパイエル板に取り込まれることで、その下に待機している樹状細胞という免疫細胞に捕らえられたり、マクロファージに食べられます。
すると乳酸菌の情報がヘルパーT細胞に伝達されて、「体に害はなさそうだけど念のため備えるか」と免疫物質であるIgA抗体やサイトカインが作られます。
つまり乳酸菌を摂りパイエル板に取り込まれることで、免疫細胞を刺激して出動させることができ、結果として免疫力の向上に繋がります。
他にもNK(ナチュラルキラー)細胞と呼ばれる、ウイルスや細菌を殺菌し、がん細胞を融解して除去する免疫細胞を活性化したり、アレルギー疾患を予防したりする効果も期待されています。

生きた菌でも死滅した菌でも効果は変わらない

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この効果は生きた乳酸菌だけでなく死滅した乳酸菌でも変わりません。菌体が小腸に届いてパイエル板に取り込まれれば良いのです。
巷では「生きた乳酸菌が良い」と言われていますが、腸内の免疫細胞を刺激する効果を期待するなら、生きた菌にこだわる必要はないということです。

免疫細胞が刺激されることで腸の機能性が高まる

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乳酸菌を摂って腸内の免疫細胞が刺激されると、その結果としてウイルスや細菌などの病原体をブロックする免疫力が高まります。それによって腸内環境が整えられて腸の働きが活性化するだけでなく、体全体の機能を高める効果が期待できます。
腸管免疫がしっかり働かないと、病気に弱くなるため腸の機能そのものが低下して、腸内環境を良好に保つことができなくなってしまいます。
腸内フローラが改善されてお腹の調子が良くなるのは、腸管免疫の働きがもたらした副産物であると捉えることができます。乳酸菌を積極的に摂って腸内の免疫細胞を刺激することで腸の働きを活性化する必要があります。

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